なぜ“輸入工具”にこだわる人が増えているのか
整備士の手に握られた一本のプライヤーやドライバー。
そのグリップの色や感触に、“国境”を感じたことはありますか?
いま、日本の整備現場やDIYシーンで静かに広がっているのが、
「輸入工具を選ぶ」という価値観の変化です。
「高いからいい」ではなく、「理由があるから選ばれる」。
それが、海外ブランドが愛される本質です。
国産工具とどう違うのか?
日本の工具は、精度や仕上げの美しさにおいて世界トップクラス。
一方、ヨーロッパのブランド――特にドイツやスイスの工具は、
“人の感覚”に焦点をあてた設計が特徴です。
握ったときの感触、力の伝わり方、長時間作業しても疲れない形。
それらは単なるスペックではなく、「作業の一部として工具をどう感じるか」を追求した結果。
つまり輸入工具は、
「モノ」ではなく「使う体験そのもの」を売っているのです。
工具を“使う”から“選ぶ”へ
近年、SNSやYouTubeでも工具紹介動画が盛り上がっています。
背景には、整備士だけでなく、DIY・キャンパー・ガレージ愛好家たちの存在があります。
彼らが輸入工具を手に取る理由は明確です。
「工具を使う時間も、自分の趣味の一部にしたい」。
仕事の効率化だけではなく、工具を選ぶプロセスそのものを楽しむ時代が来ているのです。
インポートツールカンファレンスが示した未来
2025年の大阪で開催されたImport Tools Conference 2025では、
KNIPEX・PB SWISS・Wera・STAHLWILLEなど、
世界を代表するブランドが一堂に集まりました。
それぞれのブースには、職人や整備士、工具ファンが絶えず訪れ、実際に触れ、試し、語り合う姿がありました。
まるで「工具が主役の文化祭」。
この盛り上がりは、
単なるトレンドではなく、“工具を文化として楽しむ時代”の到来を示しています。
輸入工具の魅力は、性能よりも「使う喜び」にあります。
それを知ってしまうと、もう元の工具には戻れない――
そんな“世界のこだわり”が、日本の整備現場に静かに根を張り始めています。
👉【現地レポ】Import Tools Conference 2025 in Osaka|世界の工具ブランドが語った未来
世界を代表する輸入工具4ブランド
輸入工具の世界には、ただ“高価で海外製”というだけではなく、
それぞれに確固たる哲学と専門分野を持つブランドが存在します。
なかでも今回のカンファレンスで注目を集めたのが、
ドイツのKNIPEX・Wera・STAHLWILLE、そしてスイスのPB SWISS TOOLS。
どれもプロフェッショナルの現場で長く愛され、
「信頼」という名のブランド価値を築き上げてきた存在です。
ブランド名 | 国 | 代表アイテム | 特徴 | 向いているユーザー |
---|---|---|---|---|
KNIPEX | ドイツ | プライヤー、ペンチ類 | 業界最高の精度と耐久性 | プロ整備士、配線・メカ系 |
PB SWISS TOOLS | スイス | ドライバー、六角レンチ | 人間工学×環境意識の融合 | 精密作業・エンジニア |
Wera | ドイツ | ドライバー、ラチェット | 遊び心と独自デザイン | デザイン好き・DIY層 |
STAHLWILLE | ドイツ | トルクレンチ、ソケット | 航空産業にも採用される精密性 | 本格派メカニック |
各ブランドの個性をひとことで言うなら
- KNIPEX: 「機能の究極」
圧倒的なグリップ力と精密鍛造による耐久性で、プライヤーの代名詞に。
“壊れない”のではなく“壊したくない”工具。 - PB SWISS: 「精度の美学」
ドライバーを“感覚で締める”レベルの精密さ。
永久保証制度に象徴される信頼と、環境への誠実な姿勢。 - Wera: 「遊び心の革命」
ドイツらしい堅牢さとユーモアの融合。
使う人を笑顔にする“Tool Rebel”哲学で、世界中にファンを持つ。 - STAHLWILLE: 「トルクの神髄」
航空・宇宙分野でも採用される正確なトルク管理技術。
ドイツの工業精度を象徴する“静かな名門”。
国による「ものづくりの思想」の違い
興味深いのは、同じヨーロッパ圏でも、
ブランドごとに明確な文化的カラーがあること。
ドイツブランド(KNIPEX・Wera・STAHLWILLE)は、
「合理性」と「精度」を徹底追求する傾向が強く、
設計思想は“ミリ単位の再現性”を中心に構築されています。
スイスブランド(PB SWISS)は、
一方で「人の感覚と環境との調和」を重視。
機械的な正確さよりも、人間が触れたときの自然さを優先します。
結果として、KNIPEXのプライヤーは“力の伝達”を、
PB SWISSのドライバーは“感触の正確さ”を、
Weraは“使う楽しさ”を、
STAHLWILLEは“信頼性と再現性”を追い求めているのです。
工具は「技術」ではなく「文化」
どのブランドにも共通しているのは、「職人を中心に考える姿勢」です。
使う人の手に寄り添い、長く使われることを前提に作られている。
それゆえ、輸入工具を選ぶことは単なる趣味ではなく、
“自分がどんな仕事をしたいか”という意思表明でもあります。
KNIPEX:プライヤー界の絶対王者

工具の世界で「KNIPEX(クニペックス)」の名前を知らない人は、まずいません。
1882年、ドイツ・ヴッパータールで創業して以来、
“プライヤーだけをつくる”という一点突破の哲学を140年以上貫いてきたブランドです。
「プライヤーしかつくらない」頑固な専門性
KNIPEXの最大の特徴は、あらゆるラインナップを手がけながらも、
製品カテゴリを“プライヤー”に限定していること。
ニッパーやウォーターポンププライヤー、ペンチ、レンチなど、
そのすべてが「掴む」「挟む」「回す」という動作に特化しています。
この一貫した姿勢は、ドイツ的な職人気質そのもの。
“ひとつの分野を極めることが、他のすべてを高める”――
そんな哲学を象徴するブランドでもあります。
現場が信頼する「手の延長」
整備士やメカニックがKNIPEXを語るとき、よく出てくる言葉があります。
「掴んだ瞬間にわかる」「これじゃなきゃ無理」。
プライヤーの口先がピタッと噛み合い、力を入れた分だけ正確に伝わるその感触は、まさに職人の手の延長。
特にVWやBMWなどの欧州車整備では、限られたスペースでも確実にトルクを伝える精度が求められるため、
KNIPEXの存在感は絶大です。
インポートツールカンファレンスで語られた“新たな挑戦”
今回のインポートツールカンファレンスでは、
KNIPEXが今後のEコマース戦略と正規販売網の強化を発表しました。
背景にあるのは、世界的な偽物流通の問題と、価格の乱立。
本社担当者はこう語りました。
「私たちの使命は“安く売ること”ではなく、
本物を正しく届けることです。」
つまりKNIPEXは、“ネット時代の信頼のつくり方”を模索しているのです。
この姿勢は、ブランドの本質が“精度”と“誠実さ”であることを改めて示しています。
限定モデルが語るブランドの矜持
喜一工具のブースで展示されたのは、ブラックフィニッシュの限定プライヤーレンチと、
新型コブラS-Edition。
黒い艶消し仕上げに赤いロゴが映えるその姿は、
まさに“機能美”を具現化した存在でした。
「特別仕様」といっても、派手さよりも質感を重視。
使い込むほどに手の脂がなじみ、
まるで革製品のように“育つ工具”でもあります。
「壊れない」ではなく「壊したくない」
KNIPEXを愛用する整備士たちは口をそろえて言います。
「これは壊れない工具じゃない。壊したくない工具だ。」
工具に“愛着”という言葉を使うのは少し照れくさいかもしれませんが、
KNIPEXはまさにその感情を呼び起こす存在。
無骨で真面目で、けれど確かに温度を持った道具です。
💡 ワンポイント
KNIPEXの魅力は「性能の高さ」よりも、「哲学の深さ」にあります。
それは“効率化”とは真逆の、“丁寧な仕事”の象徴。
ひとつの工具に信頼を託すという選択は、
現代のメカニックにとって、最も贅沢な時間の使い方かもしれません。
PB SWISS TOOLS:精密と情熱のスイスブランド

「1本のドライバーに、スイスの哲学を込める。」
そんな言葉がぴったりなのが、PB SWISS TOOLS(PBスイスツールズ)です。
創業は1878年。140年以上にわたって、スイス国内で全製品を生産。
そのすべてにシリアル番号を刻印し、“責任あるものづくり”を貫いています。
“精密の代名詞”と呼ばれる理由
PB SWISSのドライバーや六角レンチを手にした瞬間、
まず感じるのは「吸いつくようなフィット感」。
人間工学に基づくグリップ形状と、ねじを痛めない精密な刃先。
力任せに締めるのではなく、
「感触で締める」ことができるほどのトルク伝達性。
それはまるで高級時計の針を進めるような滑らかさで、
整備士の手に“感覚の正確さ”を教えてくれます。
この感触を知ってしまうと、
もう他のドライバーでは物足りなく感じる――
それがPB SWISSが“精密の代名詞”と呼ばれるゆえんです。
新シリーズ「EVO」が示す未来
2025年のインポートツールカンファレンスでは、
PB SWISSが新シリーズ「EVO」を発表しました。
キーワードは“環境と品質の両立”。
グリップ素材には再生エラストマーを採用し、
製造工程では再生可能エネルギーを100%使用。
それでいて、従来品と同等以上の耐摩耗性を実現しています。
シンプルなのに手に取った瞬間に“高品質”を感じる存在感。
環境配慮を“義務”ではなく“美意識”として昇華させる――
まさにスイスらしいアプローチです。
“永久保証”に込められた信頼
PB SWISSの象徴ともいえるのが、全製品に刻まれたシリアル番号。
これは単なる管理コードではなく、
「この1本を誰が、どこで、どのように作ったのか」を追跡できる仕組みです。
さらに全製品に永久保証がついており、
メーカーが「自分たちの仕事に誇りを持っている」ことの証明でもあります。
製品が壊れても、責任をもって修理・交換する――
その姿勢が“スイスのものづくり精神”を体現しています。
現場メカニックが語る「PB SWISSを選ぶ理由」
VW整備を行うメカニックはこう言います。
「PBのドライバーは、締めた瞬間に“終わりの位置”がわかる。」
これは、ねじを締めすぎて壊してしまうことが多い整備現場では、
何よりも大きな安心感です。
PB SWISSの工具は、単に作業を助ける道具ではなく、
“整備そのものを上達させてくれる”教師のような存在でもあります。
💡 ワンポイント
PB SWISSは“完璧な精度”の上に“温もり”を持つブランド。
環境への配慮も、デザインの美しさも、すべては「長く使われるため」。
一本のドライバーにこめられたスイスの情熱が、
今日も世界中の整備士の手元で静かに光っています。
Wera:工具を“遊ぶ”ドイツの革命児

「工具をもっと楽しく。」
――この一言が、Wera(ヴェラ)というブランドを象徴しています。
ドイツの堅実な工業文化の中で、
“退屈な工具に革命を起こした”と言われる存在。
そのアイデアとデザイン力は、整備士だけでなく
世界中のクリエイターやDIYユーザーをも虜にしています。
「Be a Tool Rebel」――工具反逆者であれ
Weraのブランドスローガンは “Be a Tool Rebel”(工具反逆者であれ)。
一見挑発的なこの言葉には、
「伝統を壊すことで、工具の可能性を広げる」という意思が込められています。
従来の工具メーカーが“堅牢さと機能美”を追求する中、
Weraはあえて“楽しさ”と“感性”に光を当てました。
黒や蛍光カラーを大胆に使ったグリップ、まるでゲームのコントローラーのような握りやすさ。
使うたびに気持ちが少し上がる――
そんな“心理的な設計”まで計算されています。
Weraが作る「人が笑顔になる工具」
今回のインポートツールカンファレンスでは、
Weraが掲げる新しい開発テーマが紹介されました。
それは「人が笑顔になる工具」。
単に作業を効率化するだけでなく、
手にした瞬間に“嬉しくなるデザイン”を目指しているのです。
会場でも、クリスマス限定セット「Tool Rebel Edition」や
ブラック塗装のShadowシリーズが注目を集めていました。
プレゼンでは、ドイツ本社の担当者がこう語りました。
「私たちは“道具”を作っているのではない。
“楽しさ”を作っているんです。」
この言葉に、会場の空気が一瞬やわらぎました。
機能性と遊び心を両立する――それがWeraの真骨頂です。
名作ツールが語る「楽しむ整備」
たとえば、Zyklop(ツイクロップ)ラチェットシリーズ。
ラチェットなのに、回す方向を変えずに早回しできる独自機構。
回転の滑らかさと軽快な音は、一度使えばクセになります。
また、Jokerレンチはスパナとラチェットの融合。
ボルトを掴んで離さない“止まり構造”は、まさに発明レベル。
そして、定番のKraftformドライバーは、
グリップだけでどの型番かわかるユニークな6角形フォルム。
すべてに共通しているのは、使う人をワクワクさせる仕掛け。
それがWeraを“革命児”と呼ばせる理由です。
情報発信もデザインの一部

Weraのもうひとつの魅力は、その発信スタイル。
SNS・YouTube・展示会――すべての場で「世界観」が統一されています。
たとえば、Instagramでは
まるでアート作品のように工具を配置した写真が並び、
ハッシュタグ「#ToolRebelNation」には世界中のファンが投稿。
このブランドは、製品だけでなくファン文化を設計しているのです。
💡 ワンポイント
Weraは“作業効率を上げる工具”というより、
“作業を楽しむためのギア”。
整備という日常に小さな高揚感を与え、
「今日はこの工具を使いたい」と思わせてくれる。
それこそが、Weraが築いた新しい工具文化です。
STAHLWILLE:航空業界も認める精度と信頼

整備の世界で「精度」という言葉を語るとき、
必ずその名が挙がる――それが STAHLWILLE(スタビレー) です。
ドイツの航空・自動車産業で正式採用されるほどの高精度トルクレンチを製造する、
“トルクの教科書”のような存在。
どんな現場でも、スタビレーのトルクレンチを手にした瞬間、その理由がすぐにわかります。
150年続く「精度の哲学」
STAHLWILLEが誕生したのは1869年。
150年以上にわたり、全工程をドイツ国内で完結させてきました。
「精度・耐久・安全性」の3原則を掲げ、
1本1本の工具に職人の誇りを宿す。
トルクレンチの校正制度は±2%以内という驚異的な精度。
それを量産レベルで維持できるのは、“精度を文化として根づかせた”ブランドだからこそです。
“精度は偶然ではなく、哲学の積み重ね”
インポートツールカンファレンスでは、
ドイツ本社から来日したHehemann氏が登壇し、
こう語りました。
「精度は偶然ではなく、哲学の積み重ねです。」
この一言に、スタビレーというブランドの本質が凝縮されています。
派手な広告もなく、SNSで話題を狙うわけでもない。
それでも、世界中の航空会社・整備工場・研究機関が“スタビレーでなければならない理由”を理解している。
精度とは数字ではなく、信頼の記録なのです。
トルクを支える技術と仕組み
スタビレーの工場では、温度と湿度を一定に保った環境下で、
職人が1本ずつ校正作業を行います。
さらに、内部構造には一切の樹脂パーツを使わず、
金属のみで組まれたメカニカル機構を採用。
この構造により、温度変化や経年による誤差が極限まで抑えられ、
10年、20年と使い続けても精度がほとんど狂わない。
それが、スタビレーが“航空業界御用達”と呼ばれる所以です。
メカニックが語るスタビレーの魅力
あるメカニックはこう語ります。
「Manoskopは、クリック感が手の記憶に残る。」
一度使えば、他のトルクレンチには戻れない。
それほどまでにスタビレーの締め付け感は“硬派”で、整備という作業を儀式のように正確にする力があります。
💡 ワンポイント
STAHLWILLEは“信頼”という言葉を最も真摯に体現するブランド。
精度を極めることは、信頼を築くこと。
トルクを正確に締めるその一瞬が、
整備士にとっての“誇り”そのものなのです。
SIGNET:カナダ発ブランドの再構築と挑戦
派手さはない。けれど、どこか温かく、誠実。
――それが、SIGNET(シグネット)というブランドの印象です。
「高級でも、激安でもない」
この“ちょうどいい立ち位置”こそが、SIGNETの最大の魅力。
プロの整備士にも、DIYを楽しむ人にも寄り添える、
“使い続けたくなる価格と品質のバランス”を持ったブランドです。
プレゼンテーマ:「ブランドを再定義する」
登壇した喜一工具の加藤常務は、こう語ります。
「SIGNETは“プロとDIYのあいだ”を担うブランドです。」
これまで「安くてそこそこ良い工具」として見られてきたイメージを脱し、
“安心して選べる品質ブランド”として立て直すことが目的。
商品の刷新だけでなく、公式サイトの写真・説明文・仕様データまで、“伝え方”そのものを再設計しているのが印象的でした。
会場では、トルクレンチやソケットセットなどの主力モデルに加え、
新ラインナップとして登場予定のツールキャビネットも展示。
どれも「無駄がなく、誠実なつくり」が際立っていました。
“手に取りやすさ”という価値
SIGNETが支持される理由は、手が届く価格帯でありながら、精度や耐久性がしっかりしている点。
「買って終わり」ではなく、「長く使える安心感」があります。
そして何より、“気負わずに使える工具”という立ち位置が絶妙。
KNIPEXやSTAHLWILLEが“理想の到達点”だとすれば、
SIGNETはその途中で背中を押してくれる存在です。
💡 ワンポイント
SIGNETは「プロの世界に一歩踏み出すための入り口」。
高級工具では届かない層にも、“良い工具を使う喜び”を広げる存在です。
整備を仕事にする人も、休日のガレージで楽しむ人も、
このブランドから“次の一歩”を踏み出していく――。
そんな未来を感じさせる、静かな挑戦でした。
イベントレポート:Import Tools Conference 2025 in Osaka

主催は、輸入工具のパイオニアである喜一工具株式会社。
KNIPEX、PB SWISS TOOLS、Wera、STAHLWILLE、SIGNETなどのブランドが集結し、各社の開発担当者が来日。
最新モデルの展示やプレゼンテーション、限定商品の販売が行われました。
会場の空気:五感で感じる「精度」

金属のひんやりとした手触り、油の匂い、グリップの温度――
それぞれの工具に“手の記憶”が宿っているようでした。
来場者の多くは整備士や工具販売店、そしてSNSで情報を追いかける熱心なDIYファン。
皆、言葉少なに工具を試し、担当者と短く会話を交わす。
「このクリック感がいいね」「ここが軽くなってる」
そんな断片的なやりとりに、工具の進化が凝縮されていました。
発表のテーマは「思想」
各ブランドが語ったのは、単なる“新商品”の説明ではありませんでした。
KNIPEXは精度の継承、PB SWISSは環境への責任、
Weraは楽しさ、STAHLWILLEは信頼、SIGNETは挑戦。
それぞれが「自分たちは何者か」を言葉にしていました。
喜一工具の石川代表が開会の挨拶で語った言葉が印象的でした。
「工具の価値は、手に取った瞬間の納得感にある。」
数字やスペックだけでは伝わらない世界。
“使い手の手の中で完成する”――それが工具の本当の魅力なのだと、
あらためて感じさせるプレゼンテーションでした。
展示エリアの熱と秩序

午後からの展示回遊では、各ブランドのブースが常に人で賑わいました。
PB SWISSの新作「EVOドライバー」、
KNIPEXのブラックフィニッシュ・プライヤーレンチ、
Weraの限定Shadow Blackシリーズ。
どのブースにも、“握って確かめたい”人たちの列ができていました。
体験の設計と余韻
印象的だったのは、会場の導線設計。
自由に回遊し、手で触れ、質問し、また戻る。
「買うため」より「確かめるため」に動けるよう計算されていました。
熱気がありながらも、決して騒がしくならない。
“丁寧な情熱”が貫かれた空間でした。
そして、すべてを見終えた帰り道。
手の中にまだ、グリップの感触が残っている。
この“感覚の余韻”こそ、Import Tools Conferenceが生み出した最大の成果なのかもしれません。
💡 ワンポイント
スペックで競う時代は終わり、これからは「哲学で選ばれる工具」の時代へ。
その始まりを感じさせる一日でした。
メカニックが語る「工具選びが整備を変える」
整備の世界では、“工具は手の延長”という言葉がよく使われます。
けれど、今回のカンファレンスを経て感じたのは、それだけではもう足りない、ということ。
本当に信頼できる工具は、
「作業のリズムを変える」――それが現場メカニックたちの共通の実感でした。
同じ作業でも、結果が違う
あるメカニックは、こう話してくれました。
「同じブレーキ整備でも、KNIPEXのプライヤーレンチを使うと
力の入り方が自然で、金属を傷つけにくい。
感覚的に“締まった”ってわかるんです。」
それは単なる精度の話ではなく、感覚の信頼性。
手の中で迷いがなくなる。
「この感触なら大丈夫」と思える。
それが、結果的に仕上がりの品質と安全性につながっていく。
PB SWISSのドライバーを愛用するメカニックも同じことを言います。
「ネジを締めるというより、“回転を感じて調律する”感じ。」
繊細なトルク感が、作業を“考える整備”に変えていくのです。
精度は“安心”に変わる
トルク管理を極めるSTAHLWILLE、
遊び心を持たせるWera、
そして手軽に信頼を届けるSIGNET。
ブランドは違っても、行き着く先はひとつ。
「安心して整備できる」ことが、最高の効率。
ミスを防ぐだけでなく、作業全体のテンポが整う。
いい工具は、時間の中の“ノイズ”を減らしてくれるのです。
工具が変わると、気持ちが変わる
ある若手メカニックが印象的な言葉を残しました。
「Weraを使うと、自然と姿勢が良くなる。
カッコつけじゃなくて、“ちゃんと向き合おう”って思うんですよ。」
良い工具は、作業者の意識を変えます。
雑にならず、丁寧になる。
整備が“仕事”ではなく“表現”になる瞬間。
そのスイッチを入れてくれるのが、工具なのかもしれません。
工具を選ぶという文化
今回のカンファレンスを通して感じたのは、
「どのブランドが優れているか」ではなく、
「自分がどんな整備をしたいか」を問い直す場だったということ。
道具を選ぶというのは、つまり、自分の整備哲学を選ぶこと。
その意識が、今の日本の整備業界に静かに広がりつつあります。
💡 ワンポイント
工具は、ただの“手段”ではありません。
それは、整備士の人格を映す鏡。
手にする一本一本が、仕事への姿勢を形にしていく。
――それが、プロの世界で語られる「いい工具」の定義です。
工具は“相棒”として選ぶ時代へ
今回の「Import Tools Conference 2025 in Osaka」は、
単なる展示会ではありませんでした。
そこにあったのは、道具を通して語られる“人の哲学”。
KNIPEXは精度で信頼を築き、
PB SWISSは環境と未来を見据え、
Weraは整備を楽しむ心を広げ、
STAHLWILLEは正確さの文化を守り、
SIGNETは次の世代へ橋をかける。
それぞれが違う言葉を使いながら、
伝えようとしていたメッセージは一つでした。
「良い工具は、良い仕事を生む。」
価格より“哲学”で選ぶ時代へ
これまで工具は、性能や価格で比べられるものでした。
しかし今は、それだけでは語れない。
「どんなブランドが好きか」よりも、
「どんな姿勢で整備をしたいか」。
作業を支える道具に、自分の信念を重ねる――
そんな“選ぶ文化”が、日本でも少しずつ根づいてきています。
工具は人を育てる
使い続けるうちに、グリップの跡が手に馴染む。
ラチェットの音が、その人のリズムになる。
工具は、ただ作業を助けるだけではなく、
“職人の時間”を記録していく存在です。
長く整備を続けている人ほど、
「この工具じゃないと落ち着かない」と言うのは、
スペックではなく“心の記憶”が宿っているから。
それは、信頼できる工具にだけ生まれる関係です。
工具はファッションではなく、人生の相棒。
長く使うほど、味が出る。
整備の手に寄り添い、仕事の流れを変え、
そして、使う人の誇りを静かに支えてくれる。
💡 ワンポイント
これからの時代、工具を選ぶというのは“自分を選ぶ”こと。
KNIPEXの精度でも、Weraの遊び心でも、PB SWISSの誠実さでもいい。
自分の手と心に合う一本を見つけたとき、
整備は仕事ではなく、表現に変わるのだと思います。
関連記事リンク
🧰 [輸入工具ブランド徹底ガイド|KNIPEX・PB・Wera・STAHLWILLEの魅力比較]
🔧 [KNIPEX特集|プライヤー界の絶対王者が貫く精度と哲学]
🪛 [PB SWISS特集|精密と情熱が融合するスイス製ドライバーの世界]
🌀 [Wera特集|“工具を遊ぶ”ドイツブランドの革命]
⚙️ [STAHLWILLE特集|航空業界も認める精度と信頼]
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